もう頑張れないと感じたら:LGBTQ+当事者のための心身回復のための休息・休職の考え方と手続き
もう頑張れないと感じたら:LGBTQ+当事者のための心身回復のための休息・休職の考え方と手続き
働く日々の中で、知らず知らずのうちに心身の疲労が蓄積し、「もう頑張れない」と感じる瞬間があるかもしれません。特に、LGBTQ+当事者として、職場での人間関係や将来への不安、社会的な偏見など、様々な要因がメンタルヘルスに影響を与えることも少なくありません。
つらい状況を一人で抱え込み、無理をして働き続けることは、心身の健康をさらに損なう可能性があります。時には立ち止まり、心身の回復を最優先に考えることも非常に大切です。この記事では、心身の不調を感じた際に検討したい「休息」や「休職」という選択肢について、その考え方や具体的なステップ、利用できる制度についてご紹介します。
心身の不調サイン、見過ごしていませんか?
「疲れているだけ」「もう少し頑張れば乗り越えられる」と、心身の不調サインを見過ごしてしまいがちですが、体や心が発するSOSに気づくことが回復への第一歩です。以下のようなサインが続いている場合、注意が必要です。
- 身体的なサイン: 強い疲労感、だるさ、睡眠障害(寝付けない、途中で目が覚める、寝すぎる)、食欲不振または過食、頭痛、腹痛、肩こり、動悸など。
- 精神的なサイン: 気分が落ち込む、何も楽しめない、イライラしやすい、集中力や判断力の低下、物事への関心がなくなる、不安感が強い、焦燥感、自分を責める気持ちなど。
- 行動の変化: 仕事でのミスが増える、遅刻や欠勤が増える、人との交流を避けるようになる、趣味や好きなことへの興味を失うなど。
これらのサインは、うつ病や適応障害など、何らかのメンタルヘルス不調のサインである可能性があります。ご自身の状態を客観的に振り返り、専門家への相談を検討することが大切です。
休息・休職を考える前に:まずはできることから
本格的な休職を検討する前に、まずは日常生活の中で心身への負担を軽減するための休息を取り入れてみることも有効です。
- 意識的に休息時間を設ける: 勤務時間中に短い休憩を挟む、終業後は仕事から離れる、週末はしっかり休むなど、意識的に休息の時間を確保します。
- 睡眠を十分にとる: 規則正しい時間に寝起きし、質の高い睡眠を目指します。
- 食事や運動の習慣を見直す: バランスの取れた食事、適度な運動は心身の健康に良い影響を与えます。
- 信頼できる人に話を聞いてもらう: 一人で抱え込まず、友人やパートナーなど、安心して話せる人に気持ちを打ち明けることも心の負担を和らげます。
- 有給休暇を活用する: まとまった休みを取り、心身をリフレッシュする機会を設けます。
- 職場に相談する: 可能であれば、信頼できる上司や人事担当者、産業医などに相談し、業務量の調整や勤務時間の変更などが可能か話し合ってみます。
これらの取り組みを行っても心身の不調が改善しない場合や、症状が重い場合は、専門家への相談や、休息・休職という選択肢を具体的に考える時期かもしれません。
休息・休職は「悪いこと」ではない:考え方を変える
日本では、「休むことは甘え」「頑張り続けなければならない」といった考え方が根強い場合があります。しかし、心身の健康を損なってまで働き続けることは、長期的に見てご自身のキャリアにも悪影響を及ぼす可能性があります。
休息や休職は、決して「逃げ」ではありません。むしろ、心身が限界を迎える前に、あるいは不調から回復するために、一時的に立ち止まり、治療や休息に専念する回復のための戦略的な選択です。適切な休息期間を経ることで、心身が回復し、以前よりも健全な状態で仕事や日常生活に戻ることができる可能性が高まります。
ご自身の健康を守ることを最優先に考え、「休むことは甘えではない、回復のために必要な時間だ」と、考え方を変えてみることが重要です。
休息・休職を検討する具体的なステップ
休息や休職を考え始めたら、以下のステップを参考に具体的な行動をとってみましょう。
- 医療機関を受診する: まずは心療内科や精神科を受診し、医師に相談することが最も重要です。ご自身の状態を正確に診断してもらい、必要な治療について話し合います。休職が必要と判断された場合、医師に診断書を作成してもらいます。診断書には病名、必要な休養期間などが記載されます。
- 職場の相談窓口を利用する: 会社の産業医、保健師、カウンセラー、人事担当者などに相談します。医師の診断書がある場合は提示し、休職の意向を伝えます。職場の相談窓口は、休職制度の説明や手続きのサポートをしてくれる場合があります。
- 会社の休職制度を確認する: 就業規則で休職制度がどのように定められているかを確認します。休職期間、給与の扱い、社会保険料、復職の手続きなどが記載されています。不明な点は人事担当者に確認します。
- 休職の手続きを行う: 会社の規定に沿って、必要な書類を提出し、休職の手続きを行います。手続きについては、人事担当者や産業医の指示に従います。
- 休職期間中の過ごし方: 休職期間中は、医師の指示に従い、治療と心身の回復に専念します。無理に活動せず、十分な休息をとることが大切です。
- 復職に向けた準備: 休職期間が終わりに近づいたら、主治医と相談しながら復職が可能か判断します。復職の準備として、試し出勤制度を利用したり、徐々に生活リズムを戻したりすることが推奨される場合があります。会社の復職支援制度についても確認しておきましょう。
経済的な不安への対処:傷病手当金などの制度を知る
休職中の経済的な不安は大きいものです。病気や怪我によって仕事を休み、十分な給与が得られない場合に、健康保険から支給される傷病手当金という制度があります。
傷病手当金は、業務外の事由による病気や怪我の療養のために労務不能となり、連続する3日間を含み4日以上仕事を休んだ場合に支給されます。支給期間は、支給を開始した日から最長1年6ヶ月です。支給額は、概ね標準報酬日額の3分の2相当額となります。
この制度以外にも、会社の福利厚生や各種保険などで支援がある場合もあります。傷病手当金制度の詳細や申請方法については、ご自身が加入している健康保険組合や会社の担当部署に確認してください。
どこに相談すれば良いか分からないあなたへ:専門家へのアクセス
メンタルヘルス不調を感じたとき、「どこに相談すれば良いか分からない」「専門家への相談に抵抗がある」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、専門家のサポートを得ることは、回復への大きな助けとなります。
- かかりつけ医: まずは身近な内科医などに相談してみるのも良いでしょう。心身の不調について話し、必要に応じて専門医を紹介してもらうことができます。
- 精神科・心療内科: メンタルヘルスの専門医です。診断や薬による治療、休職に関する診断書の作成などを行います。
- カウンセリング機関: 臨床心理士や公認心理師などが、話を聞いたり、心理的なアプローチでサポートしたりします。医療機関に併設されている場合や、独立した機関があります。
- 職場の産業医・カウンセラー: 多くの会社に設置されており、心身の健康に関する相談ができます。職場環境の調整について会社に提言してくれることもあります。
- 公的な相談窓口: 各自治体の精神保健福祉センターや、よりそいホットラインなど、無料または低額で相談できる窓口があります。
- LGBTQ+関連団体: LGBTQ+当事者のメンタルヘルスに詳しい専門家を紹介していたり、当事者向けのピアサポートを提供していたりする団体もあります。
専門家を選ぶ際には、ご自身との相性も大切です。必要であれば、複数の相談先を検討してみるのも良いでしょう。まずは一歩踏み出し、相談してみることから始めてみませんか。安心できる相談先の探し方については、当サイトの別の記事「安心への第一歩:LGBTQ+当事者向けメンタルヘルス相談先の選び方」も参考にしてください。
まとめ:回復への第一歩を踏み出す勇気
働く中で心身の不調を感じ、「もう頑張れない」と感じることは、決して特別なことではありません。それは、心や体が休息を求めている大切なサインです。
休息や休職は、ご自身の心身の健康を守り、回復するための正当かつ重要な選択肢です。一時的に立ち止まることは、長期的な視点で見れば、より健康で充実した人生を送るために必要なプロセスと言えるでしょう。
一人で抱え込まず、まずはご自身の状態を把握し、必要であれば専門家のサポートを得てください。利用できる制度や相談先も存在します。
この記事が、心身の不調を感じているLGBTQ+当事者の皆様が、ご自身の心と体に向き合い、回復への一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。ご自身の健康を最優先に、どうかご自身を大切にしてください。