過去のつらい経験、どう向き合う?:LGBTQ+当事者のための心のケアと安心できる相談先
過去のつらい経験が、今の心に影を落としていませんか?
これまでの人生で、いじめや差別、家庭環境での困難、あるいは特定の出来事など、心に深く傷を残すようなつらい経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。特にLGBTQ+当事者としては、自身のセクシュアリティや性自認に関連して、理解されないことやつらい扱いを受ける機会があった方も少なくないでしょう。
過去の出来事は過ぎ去ったことのように思えても、その時の感情や経験が現在の心の状態や対人関係、自己肯定感に影響を与えていることがあります。「なぜか生きづらい」「人との関わりが怖い」「自分に自信が持てない」といった感情の背景に、過去の経験が関係していると感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、過去のつらい経験がメンタルヘルスにどのように影響を与えるのかを理解し、現在の心を守り、そして安心できる相談先を見つけるためのヒントを提供します。
過去のつらい経験がメンタルヘルスに与える影響
過去のつらい経験、特に繰り返し経験したいじめや差別、または一度きりであっても衝撃の大きかった出来事(トラウマ体験)は、私たちの脳や心に様々な影響を与えます。
- 自己肯定感の低下: 「自分には価値がない」「どうせ理解されない」といった否定的な自己イメージが形成されやすくなります。
- 対人関係の困難: 人を信じられなくなったり、逆に過度に他人の顔色を伺ったりするなど、健全な人間関係を築くことが難しくなることがあります。
- 不安や抑うつ: 常に漠然とした不安を感じたり、気分の落ち込みが続いたりすることがあります。
- フラッシュバックや過覚醒: 過去のつらい出来事が突然鮮明に思い出されたり、常に周囲への警戒心が強まったりすることがあります。
- 身体的な不調: ストレスが原因で、頭痛、胃腸の不調、倦怠感などの身体症状が現れることもあります。
これらの影響は、過去の出来事から身を守るために心が作り出した防御反応である場合もあります。しかし、その防御反応が現在の生活に支障をきたしていると感じる場合は、専門的なサポートが役立つことがあります。
過去のつらい経験と向き合うためのヒント
過去の経験と向き合うことは、時に痛みを伴うプロセスですが、現在の心を解放し、より穏やかに生きるために重要なステップとなり得ます。
1. 現在の感情とつながりを感じてみる
過去の経験の影響で、現在の自分がどのような感情や身体感覚を抱いているのか、注意深く観察してみましょう。漠然とした不安、緊張、怒り、悲しみなど、感じていることをそのまま認め、言葉にしてみることから始めてみましょう。これは、感情を「良い」「悪い」と判断するのではなく、「ただ感じている」という状態を認識する練習です。
2. 自分を責めない
過去のつらい経験は、多くの場合、ご自身の責任ではありません。当時は子どもであったり、周りの環境や状況が原因であったり、ご自身の力ではどうすることもできなかった出来事だったかもしれません。つらかった経験は、あなたが弱かったからでも、価値がないからでもありません。まずはその点を理解し、ご自身を責めるのをやめることから始めましょう。
3. 安全な方法で感情を表現する
抑え込んできた感情は、安全な方法で外に出すことが大切です。信頼できる友人やパートナーに話を聞いてもらう、日記に書き出す、絵や音楽で表現する、といった方法があります。無理に人に話す必要はありません。まずはご自身にとって最も安心できる方法を見つけてみてください。
4. セルフケアを大切にする
過去の経験からくる心身の疲労に対処するために、日々のセルフケアは欠かせません。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、リラクゼーション(深呼吸、瞑想、趣味の時間など)は、心の安定に繋がります。ご自身が心地よいと感じる時間を意識的に作りましょう。
5. 小さな「できた」を積み重ねる
過去の経験が自信を奪っている場合、小さな成功体験を積み重ねることが自己肯定感を取り戻す助けになります。「今日はこれができた」「このタスクを完了させた」など、どんなに小さなことでも構いません。ご自身が達成したことを認め、肯定的に評価する練習をしましょう。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを検討する
過去のつらい経験に一人で向き合うことは、非常に困難な場合があります。特に、感情の波が激しい、日常生活に支障が出ている、身体症状が続いているといった場合は、専門家のサポートを検討することが重要です。
専門家(カウンセラー、心理士、精神科医など)は、過去の経験が現在に与える影響を理解し、安全な環境でそれらを整理し、乗り越えるための具体的な方法を一緒に見つけてくれます。
どのような専門家がいるか
- カウンセラー/臨床心理士: 心理療法やカウンセリングを通じて、感情や思考の整理、過去の経験との向き合い方をサポートします。
- 精神科医: 精神疾患の診断を行い、必要に応じて薬物療法を検討します。カウンセリングを併せて行う医師もいます。
過去のつらい経験、特にトラウマに関連する問題に特化した専門家もいます。トラウマインフォームドケア(トラウマの影響を理解した上での支援)や、EMDR、認知行動療法(CBT)、弁証法的行動療法(DBT)など、特定の技法を用いる専門家もいます。
安心できる相談先の選び方
相談先を選ぶ際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- LGBTQ+への理解: ご自身のセクシュアリティや性自認について安心して話せるか、アライであるかなど、LGBTQ+に関する理解や経験があるかを確認しましょう。当事者向けの相談先や、LGBTQ+フレンドリーを公表している機関を探すのがおすすめです。
- 専門分野や経験: 過去の経験、特にトラウマケアに関する専門性や経験があるかを確認しましょう。ウェブサイトで専門分野を確認したり、初回相談で質問したりするのも良いでしょう。
- 相性: 専門家との相性も重要です。話しやすさ、安心感などを重視して選ぶことも大切です。
「にじいろメンタルケア」では、LGBTQ+当事者が安心して相談できる専門家や機関のリストも紹介しています。具体的な相談先を探す際には、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:過去は変えられなくても、未来は変えられる
過去のつらい経験は、今のあなたの一部かもしれません。しかし、それはあなたの全てではありません。過去の出来事によって傷ついた心に寄り添い、丁寧にケアすることで、未来の自分をより健康で穏やかな状態へと導くことは可能です。
一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家のサポートを借りながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。あなたが安心できる毎日を送れるよう、心から応援しています。